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鈴鹿放浪記(前編)


 「と! 言う事で」



 「と言う事で」





 「やっぱりこうなるのよね〜」



 「この前の高知もそうでしたけど、予告無しの決行。しかも、また日帰りなんですね」



 「あちこち連れ回されてるけど、ホテル泊なんて殆どなかったよ・・・」



 「ルカさんが少し前に気付いてくれてたからよかったですけど、いきなりこんなのを続けられると大変ですよね」



 「良かったわね。2番手で」



 「何か、言葉に棘がありません?」



 「そ〜んなことナイヨ〜。ささ、場所の説明を」



 「あっはい。今回私達が連れてこられたのは三重県の鈴鹿市。鈴鹿サーキットです」



 「今年もマスターはSUPERGTの公開練習の観戦です」



 「本当にマスターは、こう言うのが好きなんですね。休みの日も大抵見てますし」



 「アレ、好きって言って良いのかな。家でテレビみてるだけだし」



 「そうなんですか? 休みの日は大抵何かしら見てるから、『好きなんだな〜』みたいに思っていたんですけど……、車もアレですし……」


 「ど〜だろ〜ね。ワイワイ騒いでる割には、サーキットに来るのは合同テストだけだしね。おまけに日帰りだし」


 「相変わらず、よく分からない人なんですね」



 「そこは認めるわ」





 「サーキットって、観客席でず〜〜っと見てるだけだと思ってたんですけど、こういう裏側とか自由に出入り出来るんですね」


 「『そこ入って良いの?』みたいなのあるよね。」



 「マスターがサクサク行っちゃうから、ちょっとビックリしてしまいました」



 「それはいいとして、あのアホはどこ行ったの?」



 「何か、『今回はデッカく行くで〜』とか言いながら……」





 「あっちの方に行っちゃいましたけど……」



 「うへぇ、1コーナー? 遠すぎるよ。暑いし」



 「取り敢えず、追いかけてみますか?」



 「ここでブツブツ言ってても仕方ないし、そうしよっか」





 「ずいぶんと、眺めの良い場所ですね」



 「コースのスタート地点から見て、一番最初のコーナーだね。マスターは2階席に陣取ってるっぽいよ。私達は1階席の日陰で休んどこ」


 「朝は曇り空だったのに、日差しが凄くきつくなってきましたけど、大丈夫なんでしょうか……」



 「放っときゃいいのよあんなの。疲れたら降りてくるでしょうよ……」





 「あっ、アレがマスターが言ってたミクさんの車ですね」



 「そそ。お気に入りのチームね。ってか、アイツがレース見てるのも、こうやって鈴鹿に来るのも、ほぼあのチームがお目当てなんじゃないかな」


 「ふと思ったんですけど、あの車、乗っている人はどんな気持ちなんでしょうね……」



 「あー、う〜んと、やっぱり、最初は戸惑うんじゃないかな……」



 「認知度か上がってきたとは言え、私達の存在はまだマイノリティですもんね」



 「そうだね。けどサーキットだと、そこまでイレギュラーな存在じゃないんだよね。例えば……、ホラ」




 「ラブライブ」



 「マスター曰く『今年のライバル』らしいよ」



 「他にも、こう言うチームがあるんですか?」



 「去年は何台も居たんだけどね。今年は、あとはあともう1チームだけ」





 「普通のカラーリングに見えまけど……」



 「よく見て。フロントの部分」



 「あっ……」



 「分かった?」



 「IAちゃん。IAちゃんですよね」



 「参戦チームだけじゃなくて、レース自体ともコラボしてるんだよ」



 「へぇー。みんな頑張ってるんだ」



 「ささ、感心するのはこれくらいにして」



 「そろそろ言い時間ですね」



 「うん。いよいよアレを実行するわよ。準備はいい?」



 「はい。バッチリです」


                                             次回に続く・・・・・



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